明日はきっと。

本やマンガのレビューなど。

#お勧めミステリを紹介してみる(国内編)

久しぶりにきっちり更新してみようと思った今日。
こんにちは。娘がお昼寝中なので時間に余裕ができたきよです。

こういうちょっとの時間でどのくらいの更新ができるか、と思って編集画面を開いたのですが、短時間でマンガレビューは無理だなあと思ったので、こないだ眠れない夜にtwitterで見かけた「#お勧めミステリ」というハッシュタグに乗っかってエントリを起こしてみます。
ご興味のある方はぜひおつきあいください。

※日頃このブログでは作者に「先生」という敬称をつけることにしていますが、今回は省略しています。
※割と記憶で書いているのが多いので、なにかとごっちゃになってたりするかもしれない…。ごめんなさい…。

綾辻行人時計館の殺人

時計館の殺人<新装改訂版>(下) (講談社文庫)

時計館の殺人<新装改訂版>(下) (講談社文庫)

まずは「新本格」というジャンルを切り開いた綾辻行人館シリーズ」から。
綾辻といえば、最近では先日アニメになり、今日から映画が公開された「Another」を思い起こされる方も多いのではないかと思いますが、綾辻といえばやはり「館シリーズ」なのですよ。
そしてこのシリーズの中でも、トリックの出来と重厚な内容にかけてこの「時計館」の右に出るものはないと思います。そのくらいおもしろいの。うん。未読の方にはぜひ読んでほしい。ちょっと厚いけれども…。
館シリーズ」、個人的には「十角館」「迷路館」「時計館」の3つかなあと思ってて、「暗黒館」は特にちょっとホラーに寄り過ぎているきらいがあって好きではないのですが、最新作の「奇面館」は初期に近い色合いでおもしろかったです。

有栖川有栖スウェーデン館の謎」

スウェーデン館の謎 (講談社文庫)

スウェーデン館の謎 (講談社文庫)

こちらも新本格、特にクイーンの影響を強く受けた有栖川有栖は、作者と同名の「有栖川有栖」がワトスン役として出てくるシリーズが2本あり、それぞれの立場をとって「学生アリスシリーズ」と「作家アリスシリーズ」と通称されています。
実はあたしの本棚には「作家アリスシリーズ」しかなく、で、「作家アリスシリーズ」には「マレー鉄道の謎」という名作があるんですが、好みとして、この「スウェーデン館の謎」をおすすめしたい。
というのも、この作品で出てくるスウェーデン館の明るいながら陰のある雰囲気、出てくる美人妻の陰影、そして意外な犯人と、こう…、全体的に流れる明るいのにどこか陰鬱な感じが好きなのです。

歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

あ、これも新本格…(作者が)。
さておき、歌野作品はあまり好みじゃなかったと思っていたのですが、この「葉桜の季節に君を想うということ」にすっかりやられてしまったという。
何を言ってもネタバレになるという作品で、正直どう紹介していいかわかんないんだけど、だけど言えることは、ラストがすんごいのでぜひ最後まで読んでほしいな、ということです。

京極夏彦鉄鼠の檻

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

サイコロ本が あらわれた!
というわけで、京極夏彦のサイコロ本…じゃなくて、京極夏彦は「京極堂シリーズ」から「鉄鼠」をチョイス。いや、「姑獲鳥」とか「魍魎」とか大変おもしろいし、おすすめなのだけど、このシリーズは個人的にはこの「鉄鼠」と次の「絡新婦」が一段上のところにいると思っていて、どっちも大好きなんだけど、あえておすすめするなら「絡新婦」の陰に隠れがちな「鉄鼠」なのかな、と。
「鉄鼠」はなんといっても、禅寺において、「禅とは」とか「悟りとは」というところを外の人間である京極堂が堂々と言い切ってしまうところが何とも言えない魅力なんだなあと。そしてこれがある種本筋というすばらしさ。

島田荘司「斜め屋敷の犯罪」

斜め屋敷の犯罪 改訂完全版 (講談社ノベルス)

斜め屋敷の犯罪 改訂完全版 (講談社ノベルス)

完全改訂版出てるんだ…知らなかった。改訂版商売はずるいと思います。
さて、島田荘司がいなければ新本格というムーブメントは起こらなかったのではないかと思えるほどのキーパーソンで、御手洗潔という名探偵を産みだしたシリーズはおもしろいのですが、デビュー作・「占星術殺人事件」はトリックを「金田一少年の事件簿」にパクられてたり、かわいそうな作品があったりするのです。
そんな島田作品からは、「斜め屋敷の犯罪」を。名前の通り傾いている斜め屋敷を舞台に、びっくりトリックを使った殺人が…っ!って言うだけでもうね。

東野圭吾名探偵の掟

名探偵の掟 (講談社文庫)

名探偵の掟 (講談社文庫)

大人気作家の東野圭吾は、実はそんなに好きじゃない時期があったのです。が、たまたま実家にあった「怪笑小説」というユーモア小説がこれがおもしろくて、以来時々買うようになった作家さんです。
そんな東野作品、ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズももちろんおもしろいんですけど、いやいや東野圭吾のおすすめはやっぱり「名探偵の掟」でしょう、と主張したい!
推理小説や推理作家、そして我々読者へ皮肉とユーモアをたっぷりに、ミステリにありがちな展開に終始ツッコミを入れながらでもミステリを展開する上にメタフィクションが仕込まれているこの作品は、必見です。

宮部みゆき「我らが隣人の犯罪」

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)

時代小説やファンタジーにも足場を作っている当代の人気作家である宮部みゆきの数ある作品の中からは、デビュー作「我らが隣人の犯罪」をおすすめしたいです。
これは短編集で、宮部の長編といえば「火車」「理由」「模倣犯」という現代物3部作のクオリティが高くておすすめなのですが、しかし、宮部に初めて触れるならば、この「我らが隣人の犯罪」をおいてないのではないか、と思うのです。
特に表題作「我らが隣人の犯罪」と、「サボテンの花」という2本は、いわゆる「日常の謎」を扱ったものになりますが、いずれもあたたかい中にミステリ的爽快感が仕込まれている作品です。

森博嗣黒猫の三角

黒猫の三角 (講談社文庫)

黒猫の三角 (講談社文庫)

森ミステリは「理系ミステリ」と言われてて、実際そういう面もあると思いますが、単純に密室大好きミステリって側面が強い気がしています。
そんな森ミステリは、やっぱりデビュー作「すべてはFになる」から始まる「S&Mシリーズ」がやっぱりおもしろいしおすすめなのですが、単体のミステリとして考えたときに、バランスが取れた作品というのが、この「黒猫の三角」なのではないかと思います。
冒頭で、これはとある作中人物が描いた記録だと明示して、実に巧妙に仕組まれた伏線があるのですが、それが事件の解決とともに覆される様が壮観です。

横溝正史「獄門島

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

金田一耕助シリーズという名作を擁する横溝作品は、なんといっても「犬神家の一族」のあの場面(死体発見時の姿勢が「Y」のやつ)と「八つ墓村」ですが、特に「八つ墓村」は結局名探偵は何もできなかった作品という中身だったりして、個人的にはうーん、となってしまうし、「犬神家」はミステリ的にどうのってよりもあの家族のいろいろが気になる作品だったのですよ。しかし「獄門島」は、復員直後の金田一耕助がきっちり名探偵をしてくれる、しかも魅力的なトリックがある上に金田一耕助が求婚までするというおまけつき!ということでおすすめなのです。
横溝の入り口としては、「本陣殺人事件」とそれに収録された「黒猫亭事件」のような気もしていますが。

米澤穂信クドリャフカの順番

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

ただいま京都アニメーション制作で絶賛放映中、「<古典部>シリーズ」です。
今放映中のアニメでまさにこの作品の部分をやっているので、特に説明するべきところはないと思いますが、高校の文化祭の雰囲気を味わうだけでも十分楽しめる作品です。

むすび

というわけで、国内作品を10作品紹介しました!
これを書きながら、自分に「いい加減『匣の中の失楽』を読むべき…」というセルフツッコミをしていたのはここだけの話です。
みなさんの好きなミステリなど、あったら教えてくださいね!