明日はきっと。

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ラブコメ+オカルト+ミステリ=甘酸っぱい!「ホーンテッド・キャンパス」

5月にシリーズ新刊が出たタイミングで紹介すればよかったと思いつつ、「ホーンテッド・キャンパス」を簡単に紹介したいと思っていました。ほんと、余裕があれば5月のタイミングで書こうと思ってたんです。ほんと。

ホラーは味付け

本作は、第19回角川ホラー小説大賞で「読者賞」を受賞して刊行された作品です。したがって、中身は一応「ホラー」になりますし、実際舞台はとある大学のオカルト研究会だし、扱う事件も基本的に超常現象ものであります。
ただ、そういう要素はあくまでも「味付け」に近い感じで、主眼は人間関係におかれていると感じています。
あらすじを簡単に示すと、主人公の八神森司くんは「視える」体質(視えるだけで何もできない)。高校のときに悪い者に取り憑かれそうになった女の子に声をかけて救ったら、あらかわいい!その女の子に一目惚れするも何もできないまま卒業、しかも一浪しちゃう!でも、なんとか大学に入ったら、そこにはあの女の子が…!仲良くなるために、あの子のいるサークルに入ろう、オカルト研究会だとしても…。
そしてそこで出会う事件の数々、というのが本作の形であります。事件も、オカルト要素も、怖さも、どれも高いレベルで「まとまっている」話でありますが、読み進めるごとに「とってもヘタレな主人公が特定の女の子と仲良くなるために奮闘する」という絵があって、それを表現するための事件であり、オカルトであるように思えてくるのです。

森司くんとこよみちゃんの成長を愛でる

森司くんが籍を置くことになるオカルト研究会に、除霊ができるような強い霊能力を持つ人は誰もいません。「視える」人が森司くんを含めて2人だけ、あとはみんな「視えない」し祓えない。そんな研究会に相談しにくる学生や先生とコミュニケーションを取りながら、研究会のメンバーが極めて現代的な手法で解決に導くのが本作の特徴と思います。
必然的に多くの人(だけではなく霊とも)と接することになり、そこで様々な経験をし、支え支えられ、守り守れらという中で森司くんは成長し、好きな女の子との距離を縮めていきます。その好きな女の子、名前をこよみちゃんといいますが、彼女は人一倍霊に取り憑かれやすい性質でありつつも、彼女もまた成長を見せるのです。この二人の成長と、それを生暖かい目で見守る他のオカルト研究会の面々という構造がとても温かく作品を包み込んでいて、ホラーという分野でありながら甘酸っぱいラブコメを体現している、非常によい作品です。

時々混じる怖い話に要注意

温かいなあと思って読んでいると、うっかり怖い話が混ざってたりするので油断できない作品でもあります。個人的には、1巻の3話、2巻の最終話あたりは結構怖く仕上がっているので、油断していると「げっ…」て思うこと請け合いです。

ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)