明日はきっと。

本やマンガのレビューなど。

『トニカクカワイイ』に見るラブコメの「甘さ」の境界線

まさかの2週連続で感想を書いております。(挨拶)
ということで、今週の『トニカクカワイイ』を読んだ感想というエントリですが、当初は「新婚(フィクション)っぽい甘々な話だったなあ…」以外の感想はなかったのですよ、ただ、タカヒナくんとのTwitterでのやりとりで「今週くらいになると辛い」という話があって、それでふと思ったことをまとめてみようと書き始めたのがこの文章です。雑な展開かもしれませんがご容赦ください。

今週の『トニカクカワイイ』をまとめてみる

今週の『トニカクカワイイ』第19話「なんだこの話?」を要約すると、「寝相が悪いお嫁さんが同居開始数日でついに旦那の布団に潜り込んだ!旦那は本能に従って抱きしめた!柔らかくてあったかくていい匂いがする!だからダブルベッドがほしい!そのためには引越…?からの嫁「狭い方が近くに感じられるし」で最初に戻る」というお話でした。ただのいちゃこらですすばらしい。ほんといちゃついてしかいないので、何も考えずにこの夫婦を愛でることが今週の基本的な読み方だと思いますが、いちゃこらも度が過ぎるとまずいよね、というところも見えてきたところは確かにあるのです。

少年誌で「その後」を描くことには限界がある

ジャンプであれば『電影少女』、『いちご100%』、『ToLOVEる』や『ゆらぎ荘の幽奈さん』、あるいはマガジンであれば『涼夏』や『GE〜グッドエンディング〜』、『ドメスティックな彼女』などのように、男女関係における一線を越える、あるいは超えそうになる、乳首券をよく使うなどの少年誌的お色気分多数のラブコメを中心に、一定の線があってそれを超えることが終わりの始まりだったりすることがあります。いわゆる「お付き合いを始めたところでHappyEnd」です。少女漫画になると少し様相が変わってきて、お付き合いし始めてから山あり谷ありを経てHappyEndな展開*1も増えてきますが、少年誌ではたぶん『涼夏』が限界*2だろうと思われるところです。
ブコメは好きなのでよく読みますが、少年誌掲載作品ではやはり「お付き合いを始めたあとの先のこと」を描くことに難しさがあるのだろう、というのはこれまで読んできた作品を思い返すとなんとなくそう思えます。
その部分を開拓しよう、というのが本作『トニカクカワイイ』というわけで、そういった意味で改めて今週甘々な話を読み返してみると、「甘々だけどどのくらいの甘さで構成しているのか」ということが物語をたたむトリガーになるのでは、と感じました。ここまで述べてきたように、少年誌で「一線を越える」ことが難しいのですが、『トニカクカワイイ』の基本がナサと司の夫婦関係である以上、夫婦関係における身体的な接触は避けて通れません。キスや抱きしめるは許容されても、おそらくその先に行くことは簡単ではないでしょう。だからこそ、ストーリーの甘さの度合いが物差しになるのではないのか——と、そう思うのです。

第19話は物差し

記憶に頼った雑な前段を踏まえると、今週の第19話はかなり踏み込んだ感じです。ナサがかなり具体的に「身体的なその後」を考えるきっかけになっています。司が寝ぼけてナサのベッドに入ったというのが端緒ですが、その後ナサが自分の意思で抱きしめたこと、そこから考えが展開して行動につながっていくという話の流れが、先週までの月読家の話や指輪の話などにより、「お互いのことを知って精神的な距離感を縮めた」ことが前提になっています。ナサがラブコメ主人公らしい初心さを見せているので先に進めないだけで、お互いが想い合っているという認識がそれぞれの行動や言動から明らかになっており、一応届もされていて阻むものがありません。この先はほぼ確定的と思わされました。
そう考えると、この第19話は今後の『トニカクカワイイ』における物差しとして機能しそうです。これ以上のラブコメ的甘さは、描き方によっては終わりへの一歩になるだろうと考えると、そうするとナサと司の関係の進み方を見る上で、19話を超えてくるかどうかというのは一つの基準となり得るのではないでしょうか。今回と同程度の甘さなのかどうか、それが身体的な面から生じるものなのかそれとも精神的なところから出てきているものなのか、そういったところでこの先を量る物差しにちょうどいいお話だったのではないか、というのが、読み返したあたしの感想です。
いずれ非常に難しい舵取りを迫られていそうですが、しかし畑先生が自ら「めでたしめでたしのその後を」と言って少年誌で始めた本作ですので、きっと思いもよらない展開をしてくれるものと楽しみにしております。
とりあえず、そろそろナサの両親と絡んで欲しい今日この頃です。結婚は2人だけで完結するわけではありませんので。親とか親戚とか避けて通れないんだよう!

*1:最近終わった作品だと『君に届け』とかでしょうか。

*2:一線を越えてでき婚してEnding