百器徒然袋―風。やっぱり京極夏彦はすごい。
久しぶりに文庫本の感想を。たまにはちゃんと活字を読んでいるということで。実際最近はマンガが多いので、時々でもちゃんと文庫本を読んでいきたいものです。
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/16
- メディア: 文庫
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百器徒然袋シリーズは、京極堂シリーズの外伝的な存在で、榎木津礼二郎の破天荒っぷりを京極堂シリーズには出てこない本島君の視点から描いた連作中編もの―と考えるのがちょうどいいのかな?今回の「風」では、京極堂シリーズ本編で言うと「文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)(AA)」から「文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)(AA)」までの間にあったことととらえるのがよさそうです。
京極夏彦作品は何と言ってもその「厚さ」に圧倒されることが多いです*1が、一度ハマってしまうとその厚さを感じさせないおもしろさがあるのがその魅力じゃないのか、と思っています。百器徒然袋は比較的薄い方*2ですし、結構あっさりと読めました。やはり、京極夏彦にはあの厚さを逆に力に変えているのかなと思ったり。
ちょっとだけ中身も。解説でも書かれていたのですが、この作品では各中編の各章ごとに入りの文章にテーマ性があって、そこがまた心憎い演出。また、前作の「文庫版 百器徒然袋 雨 (講談社文庫)(AA)」ラストで語り手「僕」の名字が明かされたのですが、今作のラストでは名前を明かして前作との対比をする余裕も。またその名前の明かし方がうまいなあと思いました。榎木津の新たな一面を見せつつ…という演出は、もうよすぎ。
ぶっちゃけ京極作品に初めて触れる人にはまったくもってオススメできないこの作品ですが、京極堂シリーズを読んだことある方で百器徒然袋を読んだことがない方は、今すぐ読んだほうがいいと思います。そんな人がいるかはわかりませんが。