明日はきっと。

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アルスラーン戦記12 暗黒神殿(ネタバレあります)

暗黒神殿 アルスラーン戦記12 (カッパ・ノベルス)

暗黒神殿 アルスラーン戦記12 (カッパ・ノベルス)

一日遅れでようやく入手できました(≧∇≦)
らいとすたっふ社長ブログらいとすたっふスタッフ雑記帳でもれてきた「誰かが死ぬ」情報をはじめとする思わせぶりな情報の数々に踊らされてきた感じです。
それでもやっぱりおもしろい。さすが…というか。

アルスラーン戦記って、銀河英雄伝説とはまた違った意味で「国」とか「政治」といったことへの問いかけという側面があるんだなあ…と特に今巻身にしみて思いました。その辺はやはり田中芳樹というべきか。銀英伝のようにもろに「有能な専制君主による独裁」VS「堕落した民主主義」といった対立軸を描いていないうえに、主人公そのものが最高権力者でかつ有能で民衆に優しい政治を志向しているというところが、少しそういう軸を見えにくくしているというだけなのかな。

以下はネタバレです。


ペシャワール城の攻防にイルテリシュが登場するのはある程度想定内だったとはいえ、まさか第1章でもろに出てくるとは思いませんでした。ザッハークの下僕になったとはいえ、やっぱりイルテリシュはイルテリシュ、頭は悪いと見えます。アルスラーンが国王になって初めての「指揮官級」戦死者が出ることには出ましたが、言われていた十六翼将でなかったことに一安心。どちらかというと、イスファーンの飼い狼の片割れの死が印象的に書かれていますね。そういう意味での意外性はあったかも。ここでこういう演出をして、さらにイスファーンに何度か「仇討ち」的な発言をさせたのはやはり伏線でしょうか。イルテリシュをイスファーンが追いかける、という構図が今後は多く見られそうです。あと、クバートの登場がかっこいい。ここまで武将的な書き方をされるのは初めてでは?
ミスル国のクシャーフルことヒルメスのほうも、久々に存在感を発揮した黄金仮面のバカ行為によってクーデター。成功乙。マシニッサが死にましたが、これについてはそれほどコメントするものでもないですねー。
途中とばして最後のほうの話ですが、アルスラーンの言葉にナルサスが「おびえるほどに」敬服するシーンが今回のもっとも重要なシーンなのかな。ネタバレ前にも書きましたが、時々最高権力者たるアルスラーンの口を使って出てくる言葉は油断ならないです。今回の

私はパルスの民衆の道具だと思っている。(p177)

という言葉から始まる3行、そしてその後のナルサスというのは、今までのアルスラーン戦記では見ることのなかった光景と言えます。そしてナルサスが感じる不吉な予感とは?という引きがあり、さらに最終章の最後の最後でアルスラーンエラムの会話で締めて、その道先の不吉を描写するというさらなる引きがあったわけですが、これが示すのは、

アルスラーンは死ぬ」

ってことなんじゃないの?と思ったのでした。いずれ、早く続きが読みたい展開ですが、おそらく次に出るのは創竜伝の14巻のはず。そっちも楽しみです。