明日はきっと。

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ηなのに夢のよう

ηなのに夢のよう (講談社ノベルス)

ηなのに夢のよう (講談社ノベルス)

森博嗣のミステリ、Gシリーズの6作目。ミステリ、と書いたけれども、この「η」はミステリではない気がします。
Gシリーズって、入りは新キャラの山吹・海月・加部谷の3人のお話だったと思うのですが、どんどん犀川西之園萌絵真賀田四季の物語になってきた感じがします。S&Mシリーズの続篇的感覚。そして、このシリーズで犀川や萌絵や真賀田博士に別れを告げようとしているのではないか、という気持ちを抑え切れません。
理由はネタバレを含むので続きからどうぞ。「超」ネタバレですので、読んでいない人は読まない方がいいです。前情報なしで読んでから読んで欲しい感想です。

特に今作では、人は死ぬけれどもそれについて追いかけることはほとんどない。前半で議論のほとんどが行われてしまい、焦点は一連のギリシア文字事件は真賀田四季と関連があるのか?という点に収束されます。さらに、これも前半のうちに萌絵の両親が亡くなる原因となった飛行機事故についての新見解が、久々登場のキャラクタから明かされ、ここにも真賀田四季の影が見え隠れする。ここまでくると完全に、S&Mシリーズや四季4部作の続篇です。書き出されるのは、一人の天才とそれを追いかけ続けた研究者師弟の「成長」。中でも、萌絵というキャラクターの変遷が「η」で結実したと言えます。飛行機事故の新見解を受け止めるところ、あるいは後半の瀬在丸紅子との会話からそれが伺えます。さらに、東京の大学から萌絵に助手に採用したいという声もかかってきていることが示される。そしてラスト。
ミステリ的なオチはほとんどありません。ここにあるのはただ、今まで森先生が紡いできた物語のキャラクターたちのこれまでに結論をつける伏線と考えています。そして、このGシリーズで長らく書かれてきたこのキャラクターたちに別れを告げるのではないか   。そんな気がしてなりません。

それにしても、Gシリーズは作を追うごとに新キャラの影が薄くなっていく。S&Mシリーズでも、Vシリーズでもシリーズの終わりにはシリーズ全体を覆す大仕掛けがあっただけに、このシリーズでもそういうのがあるのかな?と思ってはいますが、さっぱりわかりません。この「η」で、今までの総決算イメージ色彩を強く意識してしまったからだと思いますが…。