明日はきっと。

本やマンガのレビューなど。

師匠と弟子・その二人の作り出した「普通少女」

西沢さんの誕生日企画ということで、ずっと前からやってみようと思っていた日塔奈美との比較をしてみたいと思います。準備していたわけではないので、gdgdになったらすみません。

イントロダクション1:「ハヤテのごとく!」とは?

週刊少年サンデー連載の畑健二郎作のマンガ。一話完結のコメディを主体としながら、ゆるやかな時間のつながりを描く物語。伏せ字を使ったサブカル的ネタも満載しつつ、ちゃんと少年マンガしている。

イントロダクション2:「さよなら絶望先生」とは?

週刊少年マガジン連載の久米田康治作のマンガ。一話完結のギャグ。週刊少年サンデーで連載していた「かってに改蔵」の作風をベースに、痛烈な社会風刺を織り込んだ作品。畑健二郎久米田康治の弟子にあたる。

イントロダクション3:西沢歩とは?

ハヤテのごとく!」に登場する人物の一人。ほとんどのキャラクターがお金持ちの中、唯一平凡な家庭で平凡な高校に通い、普通であることが取り柄であると言われる普通な少女。そしてむくわれない。一度主人公の綾崎ハヤテに告白するもひどい振られ方をし、それでもめげずにハヤテを追いかける。口癖は「〜かな?」。おっぱいの大きさは普通と言われているが、最近少し大きくなったんじゃないのかな?

イントロダクション4:日塔奈美とは?

さよなら絶望先生」に登場する人物の一人。普通であることにトラウマを持つが、唯一とにかく普通な発言をするため「普通」と呼ばれ、そのたびに「普通って言うな〜」と返す。とにかく普通なので、話の進行役やツッコミ役として出番が多い。おっぱいの大きさは明らかに普通より上。ってか絶望キャラって胸大きいキャラ多くない?

共通する「普通」と共通しない「普通」

ふつう 0 【普通】
(名・形動)[文]ナリ
(1)いつでもどこにでもあって、めずらしくない・こと(さま)。
(2)ほかとくらべて特に変わらない・こと(さま)。
(3)特別ではなく、一般的である・こと(さま)。
⇔特殊
(副)
たいてい。一般に。

の意味 - goo国語辞書

辞書で普通を引くと、このように出てきます。似たような言葉に、「一般」などがあげられるでしょう。いつでもどこにでもある、珍しくない、比べても変わらない、特別でない。そういったことをすべてたった一言「普通」という2文字(読めば3音)になる。
今年2月、tanabeebanatの日記さんでハヤテのごとく! 西沢歩 「普通少女」の存在意義 - tanabeebanatの日記というエントリがあげられました。その中でtanabeebanatさんは、このように述べています。

「普通」キャラは特にギャグ漫画でその威力を最大限に発揮します。「異常」な登場人物たちとはずれた行動ができるからです。漫画の中では「異常」が普通であって、「普通」は異常なんですよ。

ハヤテのごとく! 西沢歩 「普通少女」の存在意義 - tanabeebanatの日記

まったくおっしゃるとおりです。
ハヤテのごとく!」というマンガの中で、自転車で電車を追い抜く綾崎ハヤテ、尋常でない金持ちの三千院ナギ、有能な美人メイドのマリア、退魔師でやっぱり金持ちな鷺ノ宮伊澄、やっぱり金持ちで関西ツッコミ使いの愛沢咲夜、完璧超人の桂ヒナギク。全然身近にいないようなキャラクタにあふれています。そんなキャラクタの中で、西沢歩というキャラクタだけは僕たち読者に最も近いところにいる。
さよなら絶望先生」というマンガの中で、すぐに絶望する死にたがりな糸色望、超ポジティブ少女の風浦可符香、きっちりしていないと気が済まない木津千里、ストーキング少女常月まとい、ひきこもり・不下校少女小森霧。ものすごい属性が付与されたキャラクタにあふれている中で、日塔奈美は普通という属性を与えられ、僕たちが考えるような願いを書き、僕たちが思うようなツッコミをする。
このように、どちらのキャラクタも、読者に最も近い立場であることが共通していると言えます。でも、よく考えると同じ「普通」でも共通していないことの方が多いのです。
まずは日塔奈美を見ましょう。日塔奈美は完全なギャグマンガにおける「普通」キャラです。すなわち、ツッコミ役。読者が思うようなツッコミをさせるキャラです。あるいは、狂言回しとも言えます。非日常であるマンガの世界で、唯一日常を感じさせる(=身近な感覚を覚えさせる)キャラクタであるが故、作品世界内では異質とも言える行動を取る。そしてそれをもとに世界が動く。そんなキャラクタです。
一方の西沢歩。彼女は、完全な「作中人物」です。日塔奈美と比べると出番こそ少ないですが、その持つ役割は日塔奈美の比ではありません。彼女はサブヒロインでありながら時にメインヒロインを食ってしまうほどのポテンシャルの持ち主。綾崎ハヤテにに唯一告白済みのヒロインであり、メインヒロインの恋のライバルであり、一番人気の生徒会長にこれから秘めた思いを打ち明けられようとしている。人間関係の渦中にあるキャラクタです。同じ「普通」という属性を背負っているにもかかわらず、その役割は大きく違う。

作者の持たせた意味

日塔奈美は、「かってに改蔵」の時にはほとんど見あたらないキャラ。ひょっとしたら、早くからボケ役だった改蔵がツッコミに回るようになった「かってに改蔵」の反省を活かして作られたキャラの一人なのではないか、と深読みしてしまいます。そこまでいかなくても、明らかに話の進行・ツッコミ役としての役割を持って送り出されたキャラであると言えます。
西沢歩は、サブヒロインです。時にメインヒロインであるかもしれませんが、あくまでもサブヒロイン。これから先の物語の中で、重要なトリガーとなる可能性は大ですが、まだその先は見えない。西沢歩が「普通」でなければならない意味は、まだ明かされていません。

結論

日塔奈美西沢歩は、同じ「普通」という属性だがまったく違う意図で作られたキャラクタである。
gdgd書いていても結局ここにたどり着いてしまう^^;やっぱり、久米田康治が作ったから日塔奈美日塔奈美で、畑健二郎が作ったから西沢歩西沢歩なんだよな、と思いました。書いてて全然まとまらないのがよくわかりました。もう二度とやらない。
まじめな話、社会風刺一話完結とパロ満載ストーリーコメディで同じ意味なわけないですよねwww師匠と弟子だからこういう考察の余地ができちゃうだけで、まあやるだけ無駄というか。おもしろかったですが。
あ、あと、やっぱり「普通」って言葉は難しいなあ…と。自分の普通が普通ではないと常日頃から思っていますが、改めて肝に銘じようと思いました。

おまけ:もし、西沢歩が「さよなら絶望先生」の登場人物だったら…

たぶん出番がなくフェードアウト。

おまけ:もし、日塔奈美が「ハヤテのごとく!」の登場人物だったら…

ハヤテに優しくされてフラグが立つ。