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サンデーRでの田辺イエロウ先生と畑健二郎先生の対談、その気になる中身

7月25日に発売された、週刊少年サンデーの特別増刊「サンデーR」で、「結界師」を連載中の田辺イエロウ先生と「ハヤテのごとく!」を連載中の畑健二郎先生の対談記事が掲載されました。畑先生のバックステージでは、

だからデビューから六年、僕は田辺先生の事をずっと
心の中の同志でありライバルだと思ってやってきたのです。

(中略)

で!!このたび、ついにその運命が巡ってきたのか
満を持して、今月久しぶりに発売される
『少年サンデー特別増刊R』の対談企画としてお会いすることができたわけですよ!!

という喜びのコメントがあったくらいのものです。お二人ともこの「サンデーR」でデビューされたということのようですね。
ということで、そんな対談の中身をかいつまんでみたいと思います。
※引用文中の太字強調は、すべて引用者によります。

対照的なふたり

前述のバックステージでも話題になっていましたが、対照的な経歴のお二人。冒頭早速

畑先生:田辺先生は、僕のことご存じでした?
田辺先生:「サンデーR」の頃から読んで知ってましたよ。
畑先生:勝手に、僕のことは眼中にないだろうなと思ってました。
田辺先生:そんなことないです(笑)
畑先生:僕と違って田辺先生はスター街道を驀進してますから。僕はかなり曲がりくねった道できてるし、なにも賞を取ってませんから。

自虐ネタを飛ばす畑先生に苦笑してしまいます。この「賞を取ってない」というのは、「ハヤテのごとく!」の10巻あとがきでも畑先生が触れられていますが…畑先生、これ結構気にしているんですね…。田辺先生がこの件について

田辺先生:それなのにここまで来ているのは、逆にすごいことなのでは…?

とおっしゃっているのですがその通りだと思うのです。そんな田辺先生、

田辺先生:根拠はないけど、連載を取るまではいけるかなと思ってやってました。

という言葉にすごみを感じた次第です。

畑先生の連載観と手応え

「週刊連載は目標でしたか?」という質問に対しての畑先生の答えが強烈でした。

畑先生:『ハヤテのごとく!』に限らず、いつも人生最後の作品と思いながら毎回やってますので、連載開始時は悲壮感がありました。
田辺先生:新連載は楽しくやりましょうよ…(笑)

畑先生…………。だからこそ、ハヤテのごとく!」には思いついたネタがどんどんつぎ込まれていくのかもしれませんね。畑先生の作品への理解が深まるタームだったように思います。
さらに「連載の手応えを感じたことがありますか?」という質問に対して

田辺先生:手応えというか、週刊連載は、こなしていくことが大切だと思っているので、毎週の積み重ねにジワジワと感じるものはあります。
畑先生:ずっと打ち切りにおびえていましたが、アニメが始まる時に「アニメが終わるまでは続くな」という手応えはありましたが(笑)

対照的すぎるお二人です。田辺先生も打ち切りへの恐怖感とか持っているとは思うのですがそれをおくびにも出さず、畑先生はそれをストレートに出して笑いに持って行く。お二人の作風の違いをこういうところでも感じます。

仕事のスケジュールが明らかに

お二人の大まかなスケジュールが明らかになりました。

田辺先生:ネームにどのくらい時間をかけるかで変わるのでしょうが、私はネームがだいたい机に1日半すわっていれば終わる感じですね。
畑先生:それは早い。作画はどれくらいですか?
田辺先生:早いと4日弱。そこに時間がかかるので、ネームには時間がかけられないです。
畑先生:結構かけてますね。僕は、ネームに2日半で作画に2日半。で、残りの日にカラーとか他の仕事を。
田辺先生:かなり、いろいろやってますよね。
畑先生:常に終わると思っていたので、少しでも頑張らないと。アニメのDVDもおまけまんがを増やせば、売り上げが伸びるかなと。
田辺先生:私は単行本におまけまんがを載せたりはしますが、そこまでは頑張れない(笑)
畑先生:そっちの方が絶対いい。でも、よけいなことをしないと売れないんですよ、普通は。

ネームに時間をかけないで作画にものすごい時間をかける田辺先生と、ネームと作画がほぼ同比率な畑先生という違いが浮き彫りにされましたが、畑先生はわざわざ他の仕事にまで言及なさる。田辺先生も畑先生のいろいろやりっぷりはご存じのようで、「そこまでは頑張れない(笑)」という本音も見えます。きっと、この「他の仕事」の中にバックステージ用のイラストがあったりとかするんでしょうねー。畑先生のがんばりはやっぱり他の先生にも一目置かれているように思います。
それにしても、畑先生の「よけいなことをしないと普通は売れない」という言葉は、うなずけると同時にちょっと淋しい言葉でもあるような気がします。ただ、畑先生ご自身がオタクであるからこその言葉かもしれません。

対談でも伏せ字

絵についての質問で、畑先生のコメントには伏せ字がでてきちゃいまいた。

畑先生:僕は絵を変えるより、もっと絵がうまくなりたい。時間があれば、根本的に京○ニとかで絵を勉強し直したいです。

京アニ…(苦笑)非常に畑先生らしいコメントでありました。

ハヤテの女装について

先日の週刊少年サンデー30号に掲載された結界師219話の時音の入浴シーンに関してのお話のあと。

田辺先生:そこは伸ばさない(笑)それを言ったら、ハヤテの女装も大丈夫なんですか?
畑先生:ハヤテの女装は、描いてる時はトランス状態なんで、「これは面白い!」と思っているんだけど、あとでひかれないかと不安になったり。でも、あんなに女装が人気になるとは。
田辺先生:主人公が女装しても、男性に嫌われないのはすごい。主人公が読者に嫌われないラインってすごく重要じゃないですか。
畑先生:読者ってなかなか見えないので、そこは気をつけてはいますね。

田辺先生には、某ブログの方の「こんなにかわいい子が、男の子のわけないじゃない!」という言葉を差し上げたいと思います。
それにしても、畑先生、「読者に嫌われない主人公」って気をつけている事項にしていたんですね…。読者に殺意を抱かれる主人公だと思うんですが、ハヤテ。あ、殺意を抱かれるのと嫌われるのとは違うんですね、わかりました。つまり、読者はツンデレ。…ってあれ?

まんが家に必要な資質とは

まんが家を目指している人へのアドバイスのあと、必要な資質について尋ねられたお二人は、このように語られています。

畑先生:人の作品を楽しめることが大事。昔、なんであのアニメが好きだったんだろうと分析することで、いまの作品を作っているので。好きな作品を持っているのは、すごくいいことです。
田辺先生:私は自分が小学生の頃にまんがを読んでいた感じを思い出しながらやっています。理屈がわからなくても、読んで楽しかった感じとか。あの感覚は大事かなと。

違うようで意外に似たようなことをおっしゃっています。大きな違いは、畑先生が「分析する」と明言しているのに対して、田辺先生は感覚的な部分について話していることでしょうか。いずれ、「人の作品を楽しめることが大事」という畑先生の言葉は、パロディ要素の詰まった作品を描いてきている畑先生らしい言葉だなあと思います。久米田先生からはこういう言葉は聞けないでしょうしw

ということで。

駆け足でしたが、田辺先生と畑先生の対談でした。お二人の対照的な様子がすごく伝わってきて、それでいてそれぞれの作品がさらに楽しくなるような、そんな対談だったと思います。
みなさんも、ぜひ「サンデーR」を手にとって、この対談を読んでみてはいかがでしょうか?